相続放棄と限定承認の違い

文責:所長 弁護士 宮城 昌弘

最終更新日:2025年08月08日

1 限定承認とは

 限定承認とは、被相続人の負の財産を清算し、仮に財産が余った場合はそれを引き継ぐというものです。

 相続放棄は、プラスかマイナスかにかかわらずすべての財産を引き継がないというものですので、両者には大きな違いがあります。

2 限定承認のメリット

 限定承認は相続財産の範囲内のみで借金などを負えばよいので、仮に負の財産の方が大きい場合にはそれを負担しなくてよいということになります。

 ですので、債務額が不明な場合には限定承認を行うメリットがあるかもしれません。

 また、どうしても残したい財産がある場合にも有効です。

 例えば、被相続人が自宅を保有していた場合、相続放棄してしまうとその自宅も相続することができなくなりますが、限定承認を利用すると自宅を残すことが可能になります。

3 限定承認のデメリット

 相続放棄が自分一人で家庭裁判所へ申し立てできる一方で、限定承認は相続人が全員で家庭裁判所に申立てをする必要があります

 そのため、相続人間で意見が合わないのであれば利用は困難となります。

 また、少々ややこしい話ですが、被相続人が不動産や株式等の財産を保有していた時、譲渡所得税が生じることがあるため、被相続人の借金の支払いはないにしても思わぬ支出が生じるということがあり得ます。

 さらに、限定承認は手続にかなりの時間がかかり、場合によっては1~2年かかることもあります。

 時間がかかるだけでなく、手続自体も複雑であるため、かなりの手間暇がかかります。

 手続を弁護士などの専門家に依頼した場合も、手続が複雑である以上相応の費用がかかることになります。

 相続放棄の依頼であれば数万円程度で済むことが多いため、この点も大きな違いといえます。

4 限定承認の実際の利用について

 相続財産の限度でのみ支払えばいい、という文言からすると、限定承認は積極的に選ばれる制度のように思われますが、上述の手続きの複雑さや税金の支払い、専門家への費用の支払い等を考えると、実際のところ相続放棄と比べてかなりの支出を余儀なくされることになります。

 それを上回るようなメリットがあり、あえて限定承認を選ぶという状況は現実的に考えにくく、限定承認が利用されるのは極めて稀というのが実情です。

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